2007年01月22日

吹雪

中島みゆき「吹雪」

1988年のアルバム「グッバイガール」の一番最後の収録曲。
中島みゆきさんの世の中に対しての警告。
そんなニュアンスのある大きな曲です。

名曲と言うより問題作と言った方がしっくりきます。
当時から、この「吹雪」に対しても、中島みゆきファンの間で、たくさん議論されました。

「日に日に強まる吹雪は、なお強まるかもしれない」
「日に日に深まる暗闇、なお深まるかもしれない」
「日に日に打ち寄せる波が、岸辺を崩すように」

「どこから来たかと訊くのは、年老いた者たち」
「どこにも残らぬ島なら、名前は言えない」


吹雪は、何かの引用であり、その何かがこの曲のポイントです。
この吹雪とは、簡単に目に見えるものじゃなく、それでいて、まるで空気のように身近にあるものだと思います。
当たり前すぎて、あえてそれについて考えないものの様な気がします。

「どこにも残らぬ島」
この島とは、誰でも日本と言う国をイメージさせるでしょう。
この日本が残らない?
この意味は、大きいです。
これによって、吹雪の意味が少し見えてきそうです。


「恐ろしいものの形を、ノートに描いてみなさい」
「そこに描けないものが、君たちを殺すだろう」
「間引かれる子の目印、気付かれる場所にはない」

「どこから来たかと訊くのは、年老いた者たち」
「どこにも残らぬ島なら、名前は言えない」


この2番の歌詞は、美的でもあります。
詞と言うより詩です。
「恐ろしいものの形」が意味するのは、何でしょう?
そして、描けないものが殺す!とは?

ここには、いろんな意味があると思います。
いろんな捉え方もあります。

「恐ろしいものの形」
核兵器等、人を殺すものから、人間の心まで様々です。
或いは、御伽噺的な妖怪等をイメージされる人もあると思います。
現実的なリストラや家族崩壊、戦争とか、連想されるものはたくさんあります。

ここでは、描けないもの!なので、これは目に見えないもの、見辛いものだと思います。
見えてるんだけど、あえて見ないようにしているものとも考えられます。


「降り積もる白いものは、羽の形をしている」
「数え切れない数の、羽の形をしている」
「あまりにも多過ぎて、やがて気にならなくなる」

「どこから来たかと訊くのは、年老いた者たち」
「どこにも残らぬ島なら」
「名前は言えない、誰も言えない」
「はじめから無かったことになるのだろう」


雪を白い羽と表現してます。
数え切れない程の羽です。
羽が降って来たら、驚くかもしれませんが、それが長期化しあまりにたくさん降ってたとしたら、当たり前になるかもしれません。
誰も何とも思わず、話題すら上がらなくなるでしょう。

あくまでも羽は、比喩なので、その言葉の真意が気になるところです。
しかしこれも答えは明瞭です。
現実に起こってる事だからです。
あまりに多すぎて、それが当たり前になり過ぎて気が付かないものです。
昔は、当たり前じゃなかったかもしれませんが、今となってはそこら辺で起こってること。

これも目に見えないものだったり、見え辛いこと、あえて気にしないようにしていること等が当てはまりますね。


「疑うブームが過ぎて、楯突くブームが過ぎて」
「静かになる日が来たら、予定どおりに雪は降る」

「どこから来たかと訊くのは、年老いた者たち」
「何もない闇の上を、吹雪は吹くだろう」


この「グッパイ・ガール」を発表した直後の中島みゆきさんのコンサートツアー「野うさぎのように」で、この曲が歌われました。
後にも先にも、この「吹雪」歌われたのは、今のところこれきりです。
その時、「吹雪」歌った直後、みゆきさんからメッセージがありました。

「とかくブームってものにお気を付けよ!」

詳しい説明は無く、シンプルなメッセージ。
この一言が、この曲の大きなテーマでしょう。

ブームと言っても、いろんなブームがあります。
個人的には、思想とか世相とかをイメージさせました。
或いは、常識とか世間体とか、価値観ですね。

今にして思えば、この「吹雪」のメッセージは、当時よりも今の方が更に現実味を帯びてると思います。
「グッパイ・ガール」の頃も、チェルノブイリ爆発事故、ソ連の崩壊、天安門事件、ベルリンの壁崩壊など、たくさんの世界的なニュースが流されました。

そして、今、あれから何が変わったのだろうか?

考えて見ると、大して変わってません。
ブームが違っていても、形を変えてるだけで、同じような物が周りを支配してます。
個人的体験で言えば、殺伐としたニュースを見てても、「又か!」と思ってしまい、次第に無関心になりつつあります。
問題は、事件よりも、それを見た自分の心にあるような気がします。
どこか他人事として受け止めてしまってる自分が居ます。
そして、それが周囲で起こったとしても、連日のように度重なれば、気にもならなくなるかもしれません。
ふと、そんなことを思いました。

形を変えて、これが政治的な意図だったりとか、作為的なものだったらとか、考えると恐ろしくなります。

「吹雪」とは、人間の作り出した想念の様な気がします。
形を変えて、それが思想になったり、策略の道具になったり。
或いは、金儲けの手段だったり。
「吹雪」の犯人は、間違いなく自分を含めた人間であると言えます。
人間の作ったもの。
愚かなものを代弁したものが「吹雪」だと思います。

「はじめまして」に収録されてる「僕達の将来」にも通じるところがあります。
中島みゆきさんは、時代の代弁者だけじゃなく、時代を見極める才能に長けてると思いますね。


グッバイガール
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
中島みゆき(アーティスト)
発売日:2001-05-23
おすすめ度:4.5



中島みゆき - グッバイ ガール
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この記事へのコメント
私も作詞活動を始めてまして≪中島の影響です。≫そんな中にこのような曲があります。でも,私ってまだまだだなあとこの作品を見て思いました。このブログの中で更新されてる中でもまだ知らない曲がありますが私は詞だけで感動してしまいます。時代評論家中島みゆきの生き方がそこに見えていて。。。
Posted by ひばり吹雪 at 2007年01月22日 20:32
作詞作曲って凄いですね。
頑張ってくださいね。

この「吹雪」は、中島みゆき作品の中でも絶品です。
芸術的な詞とクールなメロディ。
個人的にみゆきさんの曲の中でも5本の指に入ります。
5本の指に入る曲、10曲以上あったりしますが。
Posted by 黄色い犬 at 2007年01月23日 21:31
あの時のコンサート「野うさぎのように」の舞台セットは「
第5福竜丸」の船底をイメージしたとか
言ってましたよねー
Posted by yossy at 2007年01月25日 03:17
yossyさん、コメントありがとうございます。
あの時のコンサートのセットは印象的です。
自分は、ベルリンの壁をイメージしました。
船底だったんですね。
Posted by 黄色い犬 at 2007年01月25日 22:36
はじめまして。「吹雪(中島みゆき)」と検索をかけたら、こちらにたどり着きました。

あの頃は原発問題のメッセージソングかと思ってましたが、ブームというものへの警鐘だったのですね。
また僕は同時に、「ファシズム復活への警鐘」にも思えてならないのです。 
太平洋戦争で多くの人命の犠牲のうえに現在の「日本国憲法」は生まれたのですが、50年ちかく政権にあぐらをかく与党がなにかにつけ「アメリカから押し付けられたもの」と言い切って改定を叫んできました。
「君が代」を国歌として定めて演奏・起立を拒んだ先生を退職に追いやり、いま「憲法改正手続法」でアメリカについて戦争ができる国にしようともくろんでいます。
その先には昭和10年代のような「思想統制」「徴兵制」が容易に想像できます。
そうならない為には国民ひとりひとりが賢くなって選挙で与野党を逆転させることが重要ではないかと思えます。

ご熟読、ありがとうございました。
万一趣旨にあわない文章であれば、削除のほどをお願いします。
Posted by 国のための準備 at 2007年07月01日 12:32
コメント、ありがとうございます。

この曲は、ブームへの警告。
ブームに流される世の中に対しての警告。
そんなイメージが強いです。

貴重な御意見ありがとうございました。
Posted by 黄色い犬 at 2007年07月11日 18:28
はじめまして。
突然なんの前触れも無く、この歌を思い出して、
高校時代に憶えた歌詞を口ずさんでいるうちに恐ろしくなり、
「これは現在のことじゃないか」
と検索していたら、こちらにたどり着きました。
何も無い闇の上を吹雪が吹くときが、やがて来るのでしょうか。。。
Posted by midori at 2011年03月25日 12:54
放射能って事ですね。
Posted by ビーコ at 2011年04月18日 12:56
描けないものが、放射線
日に日に降り積もる白いものは、放射能に汚染された雪、それは、羽の方をしている。
何もない闇の上を、津波の跡。
何処にも、残らぬ島なら、日本、地震や津波、放射能でやられてしまった日本。
黄色い犬さん、有って欲しくないけれど、このままでは、この黙示的な歌を前向きに捉えたいけれど、
Posted by あたた丸 at 2011年06月24日 11:54
日に日に打ち寄せる波が、岸辺を崩すように、は津波に、結びつく
六ヶ所村が、津波に、やられたら、日本中、世界中に人が住めなくなり、挙げ句の果ては、核戦争なんて…考えたくもないです
今六ヶ所村は、どうなっているのでしょうか、福島ばかりで、情報が無いのですが。
Posted by あたた丸 at 2011年06月24日 12:01
「恐ろしいものの形を、ノートに描いてみなさい」
「そこに描けないものが、君たちを殺すだろう」
恐ろしいものはいろいろあるし、描く事が出来る。
そこに描けないものとは、安全だと言われていた原子力発電所のこと
安全だから恐ろしくない。だから描かない
Posted by キキ at 2011年08月10日 20:07
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